夫婦の契り
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
それはまさに主人との間に永遠の絆が生まれた日のことでしょう……。
そう。結婚式…。
ではなくて、あれは4年半程前、末っ子が生まれた日のこと。
あなたは憶えているかしら。
いやきっと忘れられない。
うん。
生涯忘れることはないでしょう。(by aiko)
あれは冬の終わりのある日のこと。
妊婦の私を気遣い、仕事後主人が二人の子どもを連れて公園に行き、私は夕食の準備に取り掛かっていた頃。
なんだかお腹が痛む。
(おや?)
(これはあれだね?)
(3度目だからわかるYo!!)
(ji-n-tsu-u!👏)
すぐに主人と、近くに住む母に連絡。産婦人科にも連絡。
3人目の出産で、上2人も割りとスピード出産だったこともあり、今すぐ来て下さいとのことで母の到着を待ち、子どもたちをまかせ、主人と産婦人科へ。
そしてすぐに分娩室に。
やっぱり今回も早そう。陣痛の感覚が短くなってきた。
いよいよお産開始。
(ヒッヒッフーヒッヒッフー)
ラマーズ法を助産師さんに褒められ、得意気に披露する。
そして助産師さん二人の合図に合わせていきむ。
何度か繰り返す。
『ご主人、もうすぐですよ。こちらへどうぞ。』
年配の助産師さんに促され足元に回る主人。
(え。そっち来るの?丸見えですやん。)
でも恥じらってる場合じゃない。
お産に集中!!
(ん!?)
なにか出た感覚。赤ちゃんじゃない。
もっと小さい。
そう。うん○💩 だne!😉
すかさず助産師さん
『あっ うん○💩……』
ぅおーい!!言うなよ!言ってくれるなよ!
みんなが薄々気付いてたことを確信へと変えないでくれよ!
そこはさ、無言で処理して下さいよ。
お願いしますよ。
そりゃ出るよ。
すべての力を出し切ってるんだもん。
なにかしら出るよ(´;ω;`)
お産に集中してた私も羞恥心と申し訳なさで一瞬我にかえる。
朦朧としながらもひとまず失態を謝罪する。
『あ!ごめんなさい!』
出産中に気を遣わせないで。
いや。
わたしがいけなかったのはわかってる。
でも…もういきめないじゃないかよ。
また赤子じゃないもの産み落とすかも……(´・c_・`)
主人の前でおならすらしたことなかったのに。
そんなことを思ってるうちにまた陣痛が。
そうだ!
私は今お産中だ!
恥じらってる場合じゃない!
今はお産に集中!
いきんだ結果また出ちゃったって仕方ない!!
私は産むんだ!
母は強し!!!
私は限界以上の力でいきんだ。
『ぬお~~~~~~~~~~~!!!!!』
するん!!
出た……赤ちゃんだ……よかった……。
安堵と共に思い出す。
そうだ。
私。
脱糞現場を披露してしまったんだった…。
……………。
まぁいいか。
無事に赤ちゃんが産まれたんだ。
これ以上素晴らしいことはないじゃないか。
清々しい気分だった。
もう隠す物は何もない。
むしろ妻のそんな場面を見てしまった主人のほうが修羅場だっただろう。
私は万年便秘なので私から出たソレは一粒のコロンとしたものでした。
いつもは健康なバナナうん○を渇望していた私ですがこの時ほど便秘でよかったと思ったことはありません。
大失態の中にほんのわずかな可愛げを残せてよかった。
脱糞現場の共有。
例えるならばそれはヤクザが盃を酌み交わすような、回俗とペー俗がローヨウ(老友)を結ぶような……そんな夫婦の契り。
この先どんなことがあろうともあの日に比べたら、とるに足らないことだろう。
いつでもあの日に返ろう。
あの日を思いだそう。
………………………………………。
うん。ごめん。頼むから忘れて!!!
(´;д;`)